「百山怪奇譚」とは

舞台はとある田舎町。 

その町には、百鬼(ももき)一族が治める百山(ももやま)と呼ばれる小さな山が存在した。室町時代から続くその家系の人間は数多の獣を自在に使役し、山神の声を聞く事が出来た。

彼らはその力を周辺の村の人々や旅人の為に使い、山と共に暮らして来た。

外部の人間は、そんな百鬼をあらゆる手段で手に入れようとしたが、不用意な争いを好まぬ一族が首を縦に振る事はなかった。

 

そうして、いつの頃からか、百鬼一族に手を出そうと目論んだ外部の人間は、隠密によって内密に処理されるようになった。

彼らの名は暁(あかつき)家。百鬼に忠誠を誓った隠密の一族の献身は、現代までの百鬼家の繁栄に不可欠であった。そんな彼らは、常に百鬼の「影」として、町で息を潜めている。暁家の存在と本来の生業を知る人間は、百鬼の中でもごく一部である。

 

────時は移ろい、現代。

百鬼家の次代当主予定の少女、百鬼いろは。

暁家の次代当主予定の少年、暁八尋。

 

15歳にして将来を運命づけられた彼らは、百山を中心に起こる怪異や事件に巻き込まれ、何を見るのか。

これは、百鬼と暁、それぞれの家の因縁によって捻じ曲げられてしまった少年少女たち────そして彼らを取り巻く人々との奇妙な絆の話である。